2024/06/19
強制不妊訴訟が最高裁大法廷で結審
いよいよ、7月3日
この国が何ものか、が分かる日
ベーテルブログ 優生保護法
① 藤野豊.強制不妊と優生保護法、“公益”に奪われたいのち.岩波ブックレット No.1025.岩波書店、2020年5月8日、59ページ、520円.
② 河北新報.強制不妊訴訟 明日最高裁弁論。「やっとここまで来た」、宮城の原告一人 意見陳述へ、除斥期間適用の是非 争点.2024年5月29日、23面.
③ 遠藤大志.「全被害者救う判断を」、宮城の飯塚さん あす上告審で意見陳述、旧優生保護法 強制不妊.毎日新聞、 2024年5月28日、17面。
④ 河北新報.急性不妊訴訟 最高裁で弁論、結審-「全被害者救われる判決を」、除斥是非 夏にも判断、 2024年5月30日、1面.
⑤ 河北新報.強制不妊訴訟、20年「時の壁」崩せるか-謝ってほしい、全員救済へ高まる期待-長年名乗れず-上告審の弁論要旨.河北新報、2023年5月30日、21面.
⑥ 強制不妊訴訟「一人の人間とて見て」、最高裁弁論 憤りと悲しみ訴え.河北新報、2024年5月30日、25面.
⑦ 巽賢司、菅野蘭.被害者「国の免責許されず」、旧優生保護法訴訟-最高裁で結審、「全面救済」訴え.毎日新聞、2024年5月30日、21面。
⑧ 遠藤隆史.「人生救う判決を」、強制不妊 最高裁で弁論.朝日新聞、5月30日、1面.
⑨ 遠藤隆史、米田優人.「手術で人生狂わされた」、強制不妊訴訟 原告ら、苦しみを3時間訴え、「除斥期間」の判断注目、傍聴に配慮 手話通訳、「裁判所が費用を」認められず。Asahishinnbunn
⑩ 2024年5月30日、23面.
⑪ 河北新報.強制不妊・静岡地裁判決、「旧法は違憲」-国に除斥期間認めず.2024年5月28日、23面.
⑫ 河北新報.強制不妊 旧法「違憲」除斥適用せず、福岡地裁、2024年5月31日、21面.
⑬ 山口桂子.強制不妊 賠償命令、福岡地裁 原告12件目勝訴.毎日新聞、2024年5月31日.
⑭ 上月英興.強制不妊 国に賠償命令、福岡地裁判決「除斥」適用せず.朝日新聞、2024年5月31日、23面.
⑮ 社説.朝日新聞.ハンセン病家族保障、差別根絶し新生の促進を.2024年6月1日、9面.
⑯ 河北新報.強制不妊 来月3日判決、最高裁 除斥期間の適用 争点.2-24年6月4日、26面.
⑰ 河北新報、編集部・石川遙一朗.強制不妊訴訟、手話通訳-公費負担進まず、最高裁 法定外で異例の配慮も・・・、関係者「まだ不十分」、識者「情報保障 早急に決定を」.河北新報、2024年6月8日、1面.
⑱ DPI 日本会議.7月3日(水)、優生保護法裁判、最高裁判決を傍聴に行こう.2024年6月14日、dpi-japan.org
、私ども「てんかんケア仙台三位一体」は6月8日に年二回の「仙台てんかん医学市民講座EPLS」第55回開催に忙殺されていた。折しも、旧優生保護法-強制不妊訴訟は2018年1月31日に仙台で始まった。それから6年、いわば時満ちて、5月29日に最高裁大法廷での上告審弁論に煮詰まった。早速に、7月3日に結審の知らせも発表されている。EPLSでは強制不妊はてんかん問題に深く関わるので、今回は特別東京支局時代に新聞協会賞をも受賞している毎日新聞の遠藤大志記者さんをお呼びした。なお、EPLSのプログラムテーマとしては無理には福祉講座や就労支援講義などの範疇に入ろうが、強制不妊問題は「障害学」や「ケア学」などという次元を遙かに超えている。なお、第55回「仙台てんかん医学市民講座」は6月8日開催であり、は5月29日大法廷の弁論期日からは美事なタイミングとなった。遠藤大志記者の講演は、いわばアンタッチャブルと見做されかねない風評もあったが、聴講された方々には、もっともっと詳しくお聴きしたいと大変な評価を頂戴した。なお、その前日の5月27日に福岡地裁、5月30日には静岡浜松地裁でも、総計12件の原告勝訴の知らせが入っていた。
さて、5月29日の最高裁大法廷の弁論はいわゆる総仕上げであり、後は7月3日の結審を待つばかりである。特に優生連などの支援団体は最高裁に大結集しようと呼びかけている。当方は病床にあり馳せ参じられない。この病床で、参考資料①、岩波ブックレット1025、藤野豊さんの「強制不妊と優生保護法」―“公益”に奪われたいのち−を再度読み直した。
結論:表表紙に示されているように「日本国憲法で謳われた“公益”が優生保護法を生み、不妊手術を強制する根拠・論理となった歴史をたどる」
藤野は日本での優生保護法成立当時の立法府での議論を丁寧に振り返りながら、当時の国会議員らが雄弁に語る何を目的に強制不妊まで含む優生保護法審議過程を紐解きながら、最後は県知事執行に至らせたかを追究しています。一方、2028年1月31日の仙台地裁の訴訟が開始され2019年5月28日にその判決(違憲だが国は賠償しない)となりますが、その間いわゆる議員立法による一時救済金支給320万が成立するという動きがあったじきですが、これを前提にしても、藤野は、かの有名な福島瑞穂議員すら気づけなかった(あるいは彼女が憲法第13条を棒読みしてしまっただけか)を指摘しながら、優生保護法が憲法第13条が持つ、違憲性そして危険性自体に言及しています。藤野はハンセン病の社会隔離の研究者であり、日本では1915年に既に不妊手術が実行されていることを伝えています。ハンセン病はいわば優生保護の第一の犠牲者たる長い歴史を背負います。まして、戦後には民主化されたとか国民が幸せになったわけでもなく、ましてだからといって優生保護思想に何かしらの変化が生じたわけではないことを説きます。戦争により家や家族を失い生活の糧を失った卑近な例には、いわゆるパンパン娘もいて、彼らとて「不良な子孫を残す」一員たり得る時代でした。藤野の視点は、「公共の福祉に反しない限り」、“公益”なる不妊手術を正当化してしまう、(長い引用になりますが)「国ぜんたいの幸福」になるように基本的人権を守れというという趣旨の文章からは、基本的人権よりも“公益“を優先する(のが先で)という理解が生まれ、障害者が増えることは国の不幸で”公益“に反するとして強制不妊手術を許容する解釈も可能になります。藤野が期待したであろう福島瑞穂議員が残念ながら、ここに拘らなかったことを残念に思っているのです。つまり”公益“は特定の障害者、病者を排除し差別することを正当化する語として機能させられました。
藤野は、日本国憲法改正草案の第12条にその露骨な文面を見出します。それは「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民はこれを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」と明記しているのです。国民の人権を義務で制約し、さらに「公益」「公の秩序」によりその制約を強化しています。これは、ハンセン病患者や障害者を基本的人権の例外とみなし、隔離や不妊手術を強制してきた論理を意味する、と。
このブックレットは2020年5月8日に発行されています。強制不妊訴訟の焦点はいまは、いわゆる時効、この場合除斥期間が焦点になっていますが、その前の時期の議論です。7月3日の最高裁大法廷の結審は藤野が指摘する憲法問題、第13条を素通りする可能性があるのです。
藤野は仰る。優生保護法の人権侵害はけっして過去の問題ではありません。まさに、現在の問題なのです、と締めくくっています。資料⑮の朝日新聞の社説を藤野さんはどうお読みなのだろうか。いずれ、優生保護法−強制不妊訴訟に対して、時の宰相は被害者を官邸にお招きすることすらしてはいないし、厚生労働大臣、いやこども家庭庁長官の名すら聞こえてはきません。そんな国です。
(Drソガ)
① 藤野豊.強制不妊と優生保護法、“公益”に奪われたいのち.岩波ブックレット No.1025.岩波書店、2020年5月8日、59ページ、520円.
② 河北新報.強制不妊訴訟 明日最高裁弁論。「やっとここまで来た」、宮城の原告一人 意見陳述へ、除斥期間適用の是非 争点.2024年5月29日、23面.
③ 遠藤大志.「全被害者救う判断を」、宮城の飯塚さん あす上告審で意見陳述、旧優生保護法 強制不妊.毎日新聞、 2024年5月28日、17面。
④ 河北新報.急性不妊訴訟 最高裁で弁論、結審-「全被害者救われる判決を」、除斥是非 夏にも判断、 2024年5月30日、1面.
⑤ 河北新報.強制不妊訴訟、20年「時の壁」崩せるか-謝ってほしい、全員救済へ高まる期待-長年名乗れず-上告審の弁論要旨.河北新報、2023年5月30日、21面.
⑥ 強制不妊訴訟「一人の人間とて見て」、最高裁弁論 憤りと悲しみ訴え.河北新報、2024年5月30日、25面.
⑦ 巽賢司、菅野蘭.被害者「国の免責許されず」、旧優生保護法訴訟-最高裁で結審、「全面救済」訴え.毎日新聞、2024年5月30日、21面。
⑧ 遠藤隆史.「人生救う判決を」、強制不妊 最高裁で弁論.朝日新聞、5月30日、1面.
⑨ 遠藤隆史、米田優人.「手術で人生狂わされた」、強制不妊訴訟 原告ら、苦しみを3時間訴え、「除斥期間」の判断注目、傍聴に配慮 手話通訳、「裁判所が費用を」認められず。Asahishinnbunn
2024年5月30日、23面
⑩2024年5月30日、23面.
⑪河北新報.強制不妊・静岡地裁判決、「旧法は違憲」-国に除斥期間認めず.2024年5月28日、23面.
⑫ 山口桂子.強制不妊 賠償命令、福岡地裁 原告12件目勝訴.毎日新聞、2024年5月31日.
⑬ 上月英興.強制不妊 国に賠償命令、福岡地裁判決「除斥」適用せず.朝日新聞、2024年5月31日、23面.
⑭社説.朝日新聞.ハンセン病家族保障、差別根絶し新生の促進を.2024年6月1日、9面.
⑮河北新報.強制不妊 来月3日判決、最高裁 除斥期間の適用 争点.2-24年6月4日、26面.
⑯河北新報、編集部・石川遙一朗.強制不妊訴訟、手話通訳-公費負担進まず、最高裁 法定外で異例の配慮も・・・、関係者「まだ不十分」、識者「情報保障 早急に決定を」.河北新報、2024年6月8日、1面.
⑰DPI 日本会議.7月3日(水)、優生保護法裁判、最高裁判決を傍聴に行こう.2024年6月14日、dpi-japan.org