原発リスク、忘却の構造
ベーテルブログ 2024/03/11
① 山田孝男.原発リスク、忘却の構造.毎日新聞、2024年3月11日、2面−風知草.
② 佐々木英輔、福地慶太郎.志賀原発−リスク露呈、規制委−能登地震の知見収集を指示、断層の活動範囲―想定超す、2号機が再稼働へ審査中−1号機は過去に臨界事故、避難ルート−半島の地形が制約.朝日新聞、2024年1月11日、2面.
③ 土屋純一、高橋由衣.志賀原発トラブル続出、断層−揺れ想定越え−再稼働審査長期化へ、変圧器破損、油大量漏出、一部電源途絶、情報二転三転.毎日新聞、2024年1月13日、4面−検証能登地震.
④ 河北新報.複合災害対応−困難さ鮮明、能登地震−原発避難路寸断−集落孤立、半島や離島−豪雪、立地地域−懸念材料多様.2024年1月31日、3面。
⑤ 福山亜希.核燃サイクル−立ち往生、六ヶ所村の再処理工場−27回目の完成延期か、使用済み核燃料1.9万トン−行き場なく、長期化する審査、広がるほころび.朝日新聞、2024年2月9日、6面.
⑥ 土屋純一、高橋由衣.福島第1原発事故−描けぬ将来、消えゆく爆発の残骸、デブリ取り出し難航、固体廃棄物増え続け.毎日新聞、2024年3月7日、12面−科学の森.
私どもは、2011年3月11日、14時26分に発生した天災たる大地震/大津波・人災たる福島第1原発メルトダウンのいわゆる追悼式をベーテル3階の小さな体育館で例年のごとく開いてきた。第14回目となる。3.11追悼式は月2回のコーラスの日に合わせて、3.11前の金曜日を恒例としてある。3.112011追悼式では、ヴォランティアのピアノの先生、こづみ郁子さんが必ずお訪ねになる。その年の3.11はひどく寒かったが、身動きのつかない入院患者さん方がいつとはなしに歌を歌い始め、合唱した。日に何回も繰り返された。歌の力は素晴らしいものがあり、共に歌い合い支え合う姿となった。ベーテルの近くにお住まいのこづみ先生は、3.11では寒空に給水車の列に立ち並び続け、あの小さなお体で、さぞや重かったであろうに真水のペットボトルを10本以上もお届け下さった。市民お一人が何本頂戴できる給水であったのか、おそらく何回もお並びになったであろう。そんななか、じきにゲンパツの水素爆発、メルトダウンが知られ、いわゆるゲンパツ逃避行も知らされ始めた。
さて、本日の毎日新聞の山田孝男さんが3.11の紙面、風知草を3.11ゲンパツで埋めた。風知草はたまたま月曜日だ。今年の3.11は月曜日となったので、そうなのかもしれないし、大地震大津波/ゲンパツの災禍を飾っているのではないかもしれないが、タイトルは「原発リスク−忘却の構造」である。さすがは特別編集委員である。何事も忘れることが日本人の特徴であるという指摘は繰り返し論評されているが、今回の山田の文脈は「目先の利益をむさぼって原発リスク軽視する政治」が「忘却」するに狭く留めている。
前々回、同じくゲンパツ記事の一つとなる同社の元村論説委員の記事を紹介したが、久方ぶりにゲンパツに触れることができた。地震大国日本にゲンパツはふさわしくないと穏やかに述べている。山田特別委員は、わざわざに女川の2号機の再稼働に触れ、最先端の話題と呼ぶ。さすがだが、通常は知り得ない、原発界隈の実話まで紹介してくれて、「皮算用を語る資源エネルギー庁幹部の声に高揚感がにじむ」とまで言い及んでいる。政府行政は「人口減少でも、AI(人工知能)やEV(電気自動車)の未来は莫大な電力を食う。もっと電力を。それが政・官・業の主流の人々のビジョンである」とも付け加えている。当方からみれば、これに学が付いてしかるべきだ。山田の文脈は3月2日のNHK・ETV特集「膨張と忘却」に継いでいる。そのとおりならば、「学」は偽「学」と呼ぶことになろう。政・官・業・学一体は、一言では、みな同じムジナとなる。誰がどうのではない、もはや止め処ない日本なるものの実態だ。「原子力長期計画委(原子力委・長期計画策定会議=有識者会議)を貫く無責任の思想」なるものの体裁を別称すれば、「学」と定めて問題はない。
当方の視点は、国民なるものが国民と呼ばれるならば、国民が最も大事にする決して忘れることができないことを、いつの間にかしっかり忘れていくことにある。政・官・業・学だけの権力構造は単に表であって、事実は裏に隠れて姿を見せない「民」にあるという見方だ。
その最も分かりやすいテーマの一つが、言わずと知れている原子力政策の要、核燃料サイクルの破綻だ。フクシマの廃炉は夢物語だ。核のゴミにも先がない。ただただ、政・官・業・学が一体となって一所懸命お金かけていますよでは通らない。具体的な例として、山田編集委員は今回の志賀原発を上げ、「…能登半島地震…、北陸電力志賀原発は一時、電源を失ったものの、幸い停止中で過酷事故は免れた」と述べている。紙面でこの理解を言い切っているのは、当方には非常な励ましだ。ながら、本当にそれだけだろうか。停止中だったからという説は正しいのであろうか。翻って、すんでのところで、たまたま運が悪くなかったという説明を、どなたからかとくとくとご講義を頂戴したい。そして、これからも本当に何も起きないのだろうかを知りたいものだ。
3.112011てんかん市民の誓い2024で、当方は志賀原発について、知り得る紙面を紹介した。一方、女川原発事故は終わっているとして、先端を走りたがる宮城は自信に満ちあふれ、事故を前提として、避難経路まで万端準備したと紙面が宣っている。能登半島に酷似する牡鹿半島に危機感はない模様だ。大丈夫と言う。核燃税配布を狙う周辺自治体の話題も時折に紙面に登場するのも奇異だ。
(Drソガ)
① 山田孝男.原発リスク、忘却の構造.毎日新聞、2024年3月11日、2面−風知草.
② 佐々木英輔、福地慶太郎.志賀原発−リスク露呈、規制委−能登地震の知見収集を指示、断層の活動範囲―想定超す、2号機が再稼働へ審査中−1号機は過去に臨界事故、避難ルート−半島の地形が制約.朝日新聞、2024年1月11日、2面.
済み核燃料1.9万トン−行き場なく、長期化する審査、広がるほころび.朝日新聞、2024年2月9日、6面.
③ 土屋純一、高橋由衣.志賀原発トラブル続出、断層−揺れ想定越え−再稼働審査長期化へ、変圧器破損、油大量漏出、一部電源途絶、情報二転三転.毎日新聞、2024年1月13日、4面−検証能登地震.
④ 河北新報.複合災害対応−困難さ鮮明、能登地震−原発避難路寸断−集落孤立、半島や離島−豪雪、立地地域−懸念材料多様.2024年1月31日、3面。
⑤ 福山亜希.核燃サイクル−立ち往生、六ヶ所村の再処理工場−27回目の完成延期か、使用済み核燃料1.9万トン−行き場なく、長期化する審査、広がるほころび.朝日新聞、2024年2月9日、6面.
⑥ 土屋純一、高橋由衣.福島第1原発事故−描けぬ将来、消えゆく爆発の残骸、デブリ取り出し難航、固体廃棄物増え続け.毎日新聞、2024年3月7日、12面−科学の森.