強制不妊、国敗訴−仙台高裁2023/10/25
−時効適用の初判断、除斥は国が権利乱用-
① 河北新報.1:強制不妊−二審も国敗訴、仙台高裁−時効適用の初判断.
2:報道部石川遙一郎.最高裁判例否定、時の壁崩す.2023年10月26日、1面.
② 強制不妊の被害救済−司法に任せず政治が主導を.2023年10月26日、9面社説.
③ 河北新報.強制不妊訴訟−仙台高裁判決要旨.2023年10月26日、7面.
④ 河北新報.時効適用−救済拡大も、強制不妊仙台高裁判決、「やっとたどり着いた」、画期的判断−原告ら感慨.2023年10月26日、23面.
⑤ 小山歩.根津弥.強制不妊−仙台高裁、国の控訴棄却、国の主張を「権利乱用」と断罪.原告「ここまでやっと」.朝日新聞、2023年10月26日、25面.
⑥ 根津弥、小山歩.強制不妊−国の控訴棄却、仙台高裁−二審も賠償命令.
朝日新聞、2023年10月26日、29面.
⑦ 遠藤大志.強制不妊−国控訴棄却、仙台高裁「除斥、権利の乱用」.毎日新聞、2023年10月26日、25面.
ベーテルブログ2023/10/26
10月25日、仙台は原告勝利、国敗訴となった。素晴らしい判決である。2018年1月31日に仙台で始まった優生保護法裁判だが、4月以上前の6月1日の仙台高裁判決は極めて異質な原告敗訴であった。「正義・公平の理念のみに基づいて除斥期間の適用を制限できない」と奇妙な言い回しで国を勝訴させた。。
今回10月25日の判決前に、前回紹介したばかりだが、仙台の8月8日の開廷に当たる裁判長は「下級審が最高裁判例に反する方針を示す異例」のコメントを示した。賠償請求権が消滅するまでの期間は除斥期間ではなく、民法の規定がある時効期間を争点とすると明言し、双方に立証を求めた」のだ。国には国側の提出した控訴理由書について「明確な控訴理由を示せていない」とまで言及して指摘したこともお伝えした。専門家でもオタクでもない当方はひたすら新聞記事の文面の理解に努めようとしている。その記事類が上記①−⑦である。
この場合、地元紙河北が読者にできるだけ丁寧な取材・解説を務めようとしている。判決内容を知ろうとする素人からみて、言葉、この場合法律用語になろうが、時効なる名詞は用語化されると必ずしも制限を意味しないこと、また除斥なる目慣れない用語はやはり相当に手の込んだ特殊概念でありそうなことが分かった。河北は言う。「20年という年月を除斥期間とせず」、「中断もある時効期間」(訴えることができる)と抽出した。だから、昨年2月以来の大阪高裁判決を筆頭とする相次ぐ原告勝訴の裁判闘争は、20年たてば機械的に賠償請求権を失う旧民法の「除斥」期間をどう解釈するかという原理論議に拠り闘ってきた。有能で有効であった。その点、2023年6月1日の仙台高裁判決は、正義・公平などはものともしない問答無用の「除斥期間の適用」は最悪の単なる堅物となってしまった。何のことはない、憲法の勉強不足、現場(臨床)の研究放棄、となった。
今回の国敗訴の判決骨子で重要なのは、一に、損害賠償請求権の消滅に関する改正前民法の規定は「除斥期間」ではなく期間を延ばせる「時効」に当たり、二に、国の主張(除斥期間の機械的な適用)は権利の乱用として許されず、原告の請求権は20年行使しなくとも消滅しない、にある。簡単には国が「権利の乱用」を行えば(民法1条が禁ずる)、加害者たる実行者たる国が気の毒な憂き目となった強制不妊被害者の請求権が消滅しているなどと主張することは許されない。おそらく専門世界で今回判決が画期的となったのは「下級審(高裁レヴェル、つまり最高裁判例ではない)が除斥期間(の判例基準、つまり最高裁判断)を否定した」ことにあるとされる。
朝日⑥は判決要旨を要領よくまとめている。
河北②にはは更にいくつものの言及があり、こう読める。当方にはよく理解できない話だが、係争中にかかわらず議員立法による査定根拠のない一時金支給法があったこと、追随する政府も首相談話一つでお茶を濁したらしいなどがあった。が、以後、国会内及び政府にそれ以上のことは全くなかったという期待外れ。一方、非常に気になるのは、宰相岸田は原告らとの面談に及ばず、いまだ受理すらしていない、されていない最高裁の判断が出るまでは知らぬ存ずぬを決め込むらしいことだ。国(どなたのことか)はありそうもない最高裁の統一見解に逃げてきた。河北は穏やかに言うが、2018年から既に6年たち、「司法による解決を待つ余裕は既になくなってきた」ことは十分に分かっているはず。訴訟者原告のほとんどがいつ亡くなってもおかしくない高齢者なのだと言って失礼ではない。
私たちも河北が言うように、臨時国会での審議で一時金支給の改正案の審議が政府との活発な議論を望むが、期待できるものが国会のどこにあるのだろうか、政府なるものは何者なのか、私たちは実際には何も知らない。
(Drソガ)