2021/08/10
ベーテル花ブログ
40 風船葛 フーセンカズラ
仕事が山のように私を押しつぶす。たくさんの花を見ていて、どれも花姿を留め置きたいなと思いながら、忙しさにかまけて、一つ、また一つと残せないままだ。残せるのは十のうち一つにもならない。
今回は、ふうせんかずら。
風船葛と「てんかんケア仙台三位一体」の関係は、2005年の「主題てんかんのための夕べの集い」に遡る。ハートマーク・コンクールと名付けられた余興が開かれた。作り物でないハート・マークをありふれた日常の庭や野原の草花に見つけるもよしがテーマだ。ハートマークは圧倒的に葉っぱが多かろう。その中に、種子のハートマークの逸品があった。2−3cmの薄緑の風船の中には、三粒の緑色の種が育っている。風船が茶色になり、わずかしぼみ加減の時に、優しくもぎ取り拳底でそっと潰すように力を加えると、ポンと音がして割れる。あるものは風船が粉々になる。なかには三つ、種が入っているはずなのだ。種は既に黒光りしていている。ひっくり返して、裏、いや底をみてみる。ベージュ色の種床が見えて、美事なハートマークとなっていることに気づく、ことは難しくはない。
「夕べの集い」はこのハートマークを縁起物として、参加者全員に毎年風船一つ、つまり3粒ずつがプレゼントされる。来春には種まきを忘れず、をお願いする。なお、葛なので、高い棒を立てるか、誘い紐で支えてあげる手入れが必要だ。
今年も既に風船が黄ばみ始めているのに気づいてしまい、心が急く。風船葛の花はとても小さいので、白い小花も見逃さない鑑賞眼が要請される。また、よいカメラを持っていないとこの小花を綺麗に撮ることはできない。興味深いのは、葉の根元から飛び出してきてヒュルヒュルと伸びる、たよりげない触手の先、数cmあたりの中途に巻きツル二つを左右下方に髭のように備え、またその先1―2cmの先に花芽を三つ蓄えていることだ。つまり葛が宙を舞うための巻きツルと見たのは、なんと花枝だったのだ。花芽はそれぞれ二つの花を咲かせる。この花が散ると小っちゃな、だからとってもかわいい三角形の風船が生まれてくる。一つの花ツルに一つづつ実がなれば、つまり三つなれば上出来で、多くの場合、一つだ。一ツルで六個なっていてよいはずだが、まだみたことがない。
さて風船葛の巻きツルによく似たものに、キューリの支え柄ツルがある。ながら、決定的に違いがある。キューリの巻きツルは完全に支えツル。そして、キューリの場合は、一節に葉一枚、花芽つまりキューリの果実となる、そして支えツルと、三つが同じ場所から出てくる。だから、ふうせんかずらの花は花茎の部品としてのツルを用意して自らを支えながらその先に咲く。これをそれらしく表現するには、幾つもの専門用語を聞きかじりて知り、少しは勉強したふうに諸説を通覧して整理しなければならなくなる。
型どおりに有り難いWikipediaを頼ると、ふうせんかずらは属名そのものが「ハートの種子」だそうな。Cardiospermum halicacabum。今年もありがとう。夕べの集いの、ささやかな手土産の座は譲れない。 (Drソガ)