2021/05/27-2
ベーテル花ブログ
35 麦ナデシコ
おもいでの花というのがある。母が教えてくれた花の名は沢山あったはずだが、この名だけが繋がる。
昔は畑に咲いていた。背姿が麦に似てスレンダーにスクッと立つ。葉っぱは麦の葉とよく似る。色では紫の花だった。その姿を追いながらも、ついにどこでも逢えなかった愛しい花だった。とある時、30年以上も前になるが、思がけず出逢えた。所在の花公園だ。メインの会場には居場所をしつらえられたわけではなく、囲いが切れた、公園の楽屋ともいうべき畑に麦ナデシコが咲いているのをみつけた。
スタッフもいなかったので、種を一粒二粒でよいからと無心できなかったのが残念だ。「その時にこそ無心しないと、取り返しできない悔いが残る」。広大な山裾にあったその花公園は今は、もはやない。
さて、この写真はアグロステンマという。白色もあり、素敵だ。亜グロスが素敵な理由は、麦ナデシコに遡る。貧しい畑に紛れて咲いていた麦ナデシコは、微妙な光沢があり、いぶし金・銀を内奥にちりばめて、陽光を楽しむ、凜然の濃紫だったことを思い出させてくれる。
(Drソガ)