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フクシマ第一原発メルトダウン逃避行中に亡くなられたベーテルの患者さんたちの無念を想う−3.112011フクシマ連稿10
原発事故は終わっていない
小出裕章.毎日新聞出版、2021年3月5日、本体1300円。
その名を馳せながら気の毒な学者とも言われかねない、かの有名な小出裕章の専門分野は環境動態解析、原子力安全、放射性物質の環境動態である。京都大学原子炉実験所(現複合原子力科学研究所)助教であった小出裕章は2015年に退官した後、お住まいの信州松本で反原発の辻説法に立っていると聞く。
彼は開成高校から東北大学工学部原子核工学科を経て京都大学に入職しているが、「実験所で最下層の地位」に留まり、仕事は「時実験所内で出る放射性排水などの処理」だったと仰っている。有り体には原子力安全研究グループを組織し「原子力災害、放射能汚染など、原子力力に伴うリスクを明らかにする研究を行い、その成果を広く公表することによって、原子力利用の是非を考えるための材料を社会に提供」していた。フクシマでは、メルトダウンは直後に発生しているであることは自明であり、直ちに屋内退避の要領などを提案していたとのこと。「2011年5月23日の参議院行政監視委員会では参考人としての意見開陳を行っている。著書、講演、ブログなど枚挙に暇がない。丁寧なわざわざの非公式サイトまである。
なお、小出は1970年のオナガワに姿を現しており、当方は時期的に学生時代に彼の姿を認めている可能性が非常に高い。
ゲンパツと小出、何の説明も要らないだろうが、折角のご本なので、皆さん、是非お読み下さい。目次章節が大事なので打ってみた。思考様式なり強調点を知るには最適の方法。この稿では、表紙を飾る言葉を添える。
なお、当方は彼の身が安全なのかを心配したい。
・原子力の場にいた人間として、私には原発をやめさせることができなかった重い責任があります。もちろん、原子力を進めてきた国と電力会社には猛烈に重い責任があります。同時に、日本人一人ひとりにも責任があると私は思っています。
・「原子力緊急事態宣言」が解除されていないことが示す通り、事故はまだ継続中で、これからも長期間にわたって続きます。そのことを国も電力会社も原子力産業も、そして読者のみなさんにも改めて知ってほしいと思います。
・殺してもいい命も、殺されていい命もひとつとして存在しないように、故郷を追われ、生活の奪われ、苦闘の中で生きることも強いられていい人など、ひとりもいません。誰もが同じように穏やかな生活を送るべきなのです。そのことを福島第一原子力発電所事故から10年が過ぎようとする今、多くの人に伝えたいと思います。
<目次>
はじめに
第1章 福島第一原子力発電所で何が起きたのか
−事故発生から現在までの10年をふり返る
2011年3月11日19時3分 原子力緊急事態宣言発令/原子炉建屋で水素爆発が発生 悪夢のような光景が広がった/東京電力はメルトダウンを2ヶ月も隠していた/瞬く間に広がる放射能汚染 住民は何も知らされずバスで避難所に向かった/原子力緊急事態宣言の名のもと、放射能は全国にばらまかれた/政府の発表だけを流すマスコミに、住民の不安や苛立ちが募っていった/原子力開発は悲惨な事故の歴史とともにある/トラブルが連発し、迷走する汚染水処理問題/国が評価する巨大な凍土遮水壁、実は問題だらけだった/汚染水のタンクはもはや限界 残された手段は海洋放出のみ/放射能汚染水を海に流す、これは究極の環境汚染である/海洋放出は断固阻止せよ!漁業関係者は立ち上がった/10年という歳月が流れたも原発事故は終わっていない
第2章 私たちが生きている間に原発事故は収束しない
30−40年で廃炉を完成させるという楽観的な見通しの上に作られた呆れた計画/人間が一切入ることができず、ロボット頼みの炉心内の調査/燃料デブリの取り出しは100年たっても不可能だ/延期に次ぐ延期で、一向に進まない燃料デブリの取り出し/チェルノブイリ原子力発電所同様、原子炉建屋を石棺で閉じ込める以外に方法はない/一向に作業にメドも立たない核燃料の取り出し/果てしなく続く廃炉に向けて被曝リスクと闘う現場作業員たち/特定技能外国人労働者に被曝労働をさせようと画策する政府/放射性物質による汚れはどんなことをしても除染できない/汚染度は持ち主である東京電力にすべて返すべきである/汚染度を公共事業に使わせるなど、決して許してはならない/福島第一原子力発電所の敷地内は放射能のゴミであふれている/避難は解除されても、放射能の危険は消えない/除染なしでも避難解除したい 町長が下した苦渋の決断/帰還しないのはわがままなのか?打ち切られる住宅支援/核のゴミを未来の子どもたちに残すという愚かな選択の落とし前をつけなければならない
第3章 見捨てられた日本国民
−政府は決して真実を教えない
東京オリンピックは福島大地原子力発電所事故を隠蔽するために誘致された/原子力緊急事態宣言下の国でオリンピックを開催するという愚行/復興五輪に浮かれる政府関係者に向けられる地元福島の冷ややかな視線/事故の記憶を風化させるため、東日本大震災追悼式終了へ踏み切った/「被災者軽視」の批判のなか問われる菅政権への復興への本気度/被災者が受けているのは「風評被害」ではない、すべて「実害」である/無策ぶりをさらした新型コロナウイルス感染症対策/新型コロナウイルス感染症と原発事故に共通する政府の杜撰な対応/新型コロナウイルス感染症の対応で、福島での原発事故を忘れてはならない/「心の除染」という卑劣な言葉を用いた政府の愚策で分断された除染先進都市/国と東京電力の責任を認めた原発損賠訴訟判決/決して責任をとらない「原子力マフィア」の横暴を許してはならない
第4章 それでもまだ原発を続けるのですか
福島第一原子力発電所の事故後、世界各国で原発からの撤退が始まった/世界の潮流に逆行し、輸出政策は総崩れ それでも原発にこだわり続ける日本/核兵器の製造技術を手放さない 日本が原子力開発にやめられない本当の理由/原発による差別に苦しむ人々は世界中に数多く存在する/原発がなくなっても電力は不足しない 実は日本の火力発電所は余っている/「原子力は二酸化炭素を出さず、環境にやさしい」のウソ/地球環境を守るために必要なのは、エネルギー浪費型の社会を改めること/SDGsの観点から原子力発電を再検討する・「福島に無関心でいられない」ローマ教皇、反原爆・反原発を語る
第5章 いわれのない犠牲を他者に強いない生き方
原発誘致をめぐる地方自治体と電力会社の畏るべき癒着/交付金という「原発マネー」をめぐり自治体が争奪戦を繰り広げる/多額の交付金をちらつかせ、地方自治体に核のゴミを押し付ける国の手法/放射性廃物、処分場誘致の動き 地方自治体のあり方が問われている/安全か、経済か、原発再稼働をめぐる立地自治体の葛藤/安全性を置き去りにした、根拠なき老朽原発の寿命延長/市民の声が司法を動かした、大飯原発の再稼働差し止め請求/原子力に夢をかけた私がなぜじぶんの人生を180度転換させたのか/「さようなら原発1000万人アクション」 なぜ私は松本駅目に立つのか・原子力に夢をたくしてしまったその落とし前を自分がつけるしかない。
おわりに