今週のこの1冊202103−04(16)/今週のこの記事一つ202103−03(18)合同 フクシマ第一原発メルトダウン逃避行中に亡くなられたベーテルの患者さんたちの無念を想う−3.112011フクシマ連稿9

2021/03/22

今週のこの12021030316)/今週のこの記事一つ20210304(18)合同

 

フクシマ第一原発メルトダウン逃避行中に亡くなられたベーテルの患者さんたちの無念を想う−3.112011フクシマ連稿9

   フクシマ戦記 (上巻/下巻)10年後の「カウントダウン・メルトダウン」−

船橋洋一.文藝春秋.2021年2月25日.上巻:399頁、下巻:431頁.東京.各巻2100円。

   米、炉心溶融と分析−NRC 福島第1事故当初−元委員長「日本にも伝達」.

河北新報、202139日.

 

 

私どもは3.112011−ベーテル2021として、2011年から10年を過ぎた311日の集まり、第11回目を終えた。3.112011が何を意味するのかは、遂には直接の被災者であるかないかの問題であると認識している。この10年の復興政策の姿はしっかり見えてきたので、これに騙されない、たとえば新聞紙面は直接の被災者の10年の生き様をこそ伝えるため、深い悲しみ以上を描画せんとしている。

この政治10と全く対照となるのがフクシマだ。フクシマとて、復興では例えば富岡トルコキキョウなどの起業なども話題の一つで例外ではない。そのような流れとは全く関係なく、私どもは3.112011をツナミ「大天災」とゲンパツ「大人災」の二つに明確に区分し、フクシマは全く独立した固有の事態と措定してきた。さて、原子物理学の原子力工学の専門家達は最初から知っていたであろうが、河北新報は39日紙面に上記記事を載せた。アメリカ原子力規制委員会NRCグレゴリー・ヤッコ元委員長は、事故翌日12日の午後の1号機の水素爆発(診断)、また14日の3号機の水素爆発(確定診断)、14日の2号機格納容器の圧力異常発生、15日の4号機の水素爆発の一連の事態は、燃料損傷、炉心溶融であることを(直ちに)日本政府に伝えていたと述べた。記事の右下のメルトダウン「時間経過表」に注意深く覚え込む勢いでお目通しあれ。

今回、「この記事」と「この一冊」を合同して一つにしたのは、このメルトダウンを巡る政府と東京電力、関係させられた、否、関係したがった方々がどのように動いていたかの刻一刻一刻を教えてくれる、有り難いご本「フクシマ戦記」が出版されたからだ。当時の首相菅直人は非常に珍しく、先代の鳩山由紀夫首相を継いで理工学部出身者だ。しかも応用物理学科卒業である。だから、フクシマの事態には臨床家に近い。だからこそ、翌朝早くに現場に急行している。分かりやすくは、力があろうがなかろうと、医者がすぐ患者のもとに駆けつけたのだ。人気取りのためと言って当方は憚らないが、フクシマはその後の首相が事ある毎にフクシマを訪れるのを、マスコミは礼賛してきた。菅がフクシマ発生で翌朝早くに現場に到着している。この様をほめてはいないだろう映画も制作されてもいるが、映画監督は主張や悪意の宣伝を目的にした映画を作りはしないので、「首相」を物笑いの種にはしていないだろう。当方は管だったからフクシマはこの程度の被害で済んだのではないかという魅力的な仮説に関心がある。このフクシマ戦記の中に応用物理学科卒の首相だったからこそ為し得た、国家権力の力の見せ所があるのではと、一句一文、一小説に気を配りたい。アメリカからの支援を日本人特有の遠慮挨拶で断るような返事をしたなどの逸話もあったし、この時点でも後継政党内には、未だに首相菅は官邸を離れるべきではなかったなどと述べる「政治屋せいじや」が居るのには呆れたりする。3.20宮城県沖地震の際は、官邸に戻ることもしなかった現首相がやり玉に挙がっているのと好対照だ。菅直人は自らが題材となった映画にもコメントも反撃もなさらないほどの生真面目な方らしい。一方、聖域なき改革を掲げ、自民党をぶっ壊すと言いながら、世の中を自民党だらけにした小泉純一郎と比べてみよう。小泉は権力を手放ししてから反原発を掲げ続けている。菅直人がこの彼と一緒に、反原発の拳を共に挙げたりしている姿は滑稽だ。あなた方は民の先頭に立つ必要はなく、むしろ反原発運動の司令部にどっかと座り、身じろぎなく微動だにしてはならない。表情もかえてはならない。反原発の特攻を努めるのは我々庶民なのだから、司令の采配に腐心すればよい。兵法学の基本だ。

さて、本稿の次の主題。長々しい目次をタイプしながら疲れたが、手指が嬉しい。実に魅力的な著作だ。読み通す時間が割ける日が実際にあればなあと正直に願う。小説風に読めそうだから、自由時間のない党には実に楽しみだ。(とはいえ、最後に読んだ小説は数年前で、本屋大賞の「村上水軍の娘」。海上の戦闘物だ。瀨戸内海の大きさをイメージできないので読む行為がこんな風に苦労するとは知らなかった。第一巻を読み終えるのに何ヶ月もとまどった。第2巻はさほどの労苦なしに一気に行けた。初物も一巻目の数十頁を読みこなせ終えたら、後は容易いと知った)。

さて、「フクシマ戦記」、先に述べたメルトダウン「時間経過表」を時系列にして、菅直人を初めとした動きを本人達とのインタビューを根拠にした生々しい記録だ。

是非、お手にして、共にご毒味あれかし。

なお、発行販売元がブックカヴァーに記した紹介宣伝文は以下の如くだ。

 上巻:「戦後最大の危機」から10年、衝撃的肉薄で明かされる真実! 分刻みで描かれる「メルトダウン」。国民的ノンフィクションの金字塔

 (米国版推薦本より)―メルトダウン「時間経過表」の最中、パニックに陥る日本政府の中枢、信じがたい悲劇の数々、官僚主義、そして福島第1原発のベントに取り組んだ偉大な技術者たち。。。。。。本書はそのすべてを描き出す。

 下巻:「日本は東日本を失うかもしれない」。この国は何を間違えたのか?

(米国版推薦文より)―本書は日本の政治・経済・官僚システムが陥った失敗と、日本を救った技術者や職員たち、無私のヒーローたちの記録だ。                      (Drソガ)

 

<次稿以降予定>

  小出裕章:原発事故は終わっていない.毎日新聞社出版、202135

  リチャード・J・サミュエルズ:3.11 震災は日本を変えたのか.英治出版、2016311日.

  日本学術会議第一部(人文社会系)「福島原発災害後の社会のあり方を問う分科会」:科学不信の時代を問う−福島原発災害後の科学と社会−. 合同出版、2016510日.

 

フクシマ戦記、上下巻の目次                                   

序 フクシマはなお、終わっていない

<上巻目次:第1章から第8章>

<下巻目次:第9章から第16章まで、ならびに、あとがき、インタビューリスト>

 

第1章       SBO 全交流電源喪失

   「ヤバイ、海水が流れ込んでいる」

   IC

   水位計

   「ブタの鼻」

   免震重要棟

   オフサイトセンター

第2章 原子力緊急事態宣言

   「菅首相に違法献金の疑い」

   「管に冷却水、必要」

   「チェルノブイリのようになる」

   「原子力緊急事態宣言」

   「電力会社なのに、電力ケーブルがないのか」

   「チェルノブイリのようになるぞ、これは」

   メルトダウン

   保安検察官が逃げた

   REMAT

第3章 水素爆発

   「ベントを一刻も早く急ぐことが大切です」

   首相視察

   「オレの質問にだけ答えろ」

   管対吉田

   決死隊

   伊沢郁夫

   <これが最後のチャンスになるかもしれない>

   「頼む、頼むからここに残ってくれ」

   「斑目さん、アレは何ですか」

   #edano nero

4章 海水注入

   土下座

   「再臨界の可能性はないのですか?」

   「いったん中止する!」

   ブローアウト・パネル爆破作戦

   氷投下作戦

   3号機危機

   「これ、黒いよな」

   2号機危機

5章 運命の日

   「もうダメかもしれません」

   深夜の電話

   オフサイトセンター移転

   御前会議

   「撤退はしません」

   東電乗り込み

   異音

6章 対策統合本部

   海江田万里

   「私は官邸には帰りません」

   「瞳孔が開きっぱなしになってしまった」

   “錦の御旗”

   ボロン・ヤスイ

   子どものサッカー

7章 住民避難

   「とにかく同心円でリスクを減らしましょう」

   「長官、30Kmはムリです」

   「福島県がなくなってしまう」

   浪江町・馬場有町長

   南相馬市長・桜井勝延市長

   飯館村・菅野典雄村長

   三春町・鈴木義孝町長

   たらいまわし

8章 最後の砦

   「そうだ、これは大臣のご指示だ」

   自衛隊出動

   <放水を断念。まことに無念>

   「燃料プールで湯気が立っている」

   <放水、うまくいったよ>

   <国家の背景>

   機動隊出動

第9章 ハイパーレスキュー隊

   「日本の国運がかかっています」  

   「なんで消防は放水しないんだ」

   「自衛隊が中心」

   「何でも屋ではありません」

   線量基準引き上げ

   ドラえもん

   キリン

10章 トモダチ作戦

   ワシントン/ホワイトハウス

   東京/ルース駐日米大使

   東京/「国家主権に係わる問題」

   ワシントン/「東日本全体を失うかもしれない」

   ワシントン/藤崎電報

   チャールズ・カストー

   「見えないものは見えない」

11章 ヨコスカ・ショック

   リンゴとオレンジ

   「ことは日米同盟の将来に関わっている」

   ジョン・ボルドレン

   「50マイル」の虚実

   USSジョージ・ワンシントン

   情緒的メルトダウン

   ベニー・デッカー・シアター

12章 ホソノ・プロセス

   「枝野がルースとやっちゃった」

   官邸主導

   コアリション

   「水蒸気がある以上、水はあるでしょう」

   幻の米軍

   「同盟国は運命をともにしない」

13章 最悪のシナリオ

   「本当の底は何なんだ」

   「いまが最悪です」  

   「不測事態シナリオの素描」

   「最悪のシナリオ」日米協議

   自衛隊の「最悪のシナリオ」

   「総理大臣談話」草案

 第14章 SPEEDI

   「一般にはとても公表できない」

   モニタリング・チーム

   白いワゴン車、白い防護服

   “枝野裁定”

   「あれは悪党だね」

   逆推定

   なぜ、SPEEDIは使えなかったのか

15章 計画的避難区域

   「飯館村などすごい数字になっています」

   「何で、いままでこれが出てこなかったんだ!」

   「専門家は専門家同士でやってくれ!」

   計画的避難区域

   「ここで深呼吸ができますか」

   「寝た子を起こすな」

16章 落城一日

   <まるでガダルカナルだな>

   <海王丸>

   汚染水海洋放出

   ロボット

   落城一日

   「待避」と「撤退」

   Fukushma50

エピローグ 「神の御加護」

   衣替え

   菅直人

   吉田昌郎

   増田尚宏

   ヒーロー

あとがき

インタビューリスト