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今週のこの記事一つ2021−0205(15) 自助より制度見直しを −社会的要因による苦境−

2021/02/24

今週のこの記事一つ2021020515

 

自助より制度見直しを

−社会的要因による苦境−

梯久美子.時代の風、毎日新聞.2021221

 

 毎日新聞2面の「時代の風」は主題では埋もれた貴重な歴史を掘り起こし、新しい視点を小気味よく成文としたものを載せるので、世の流れに疎い当方には毎回とても勉強になる。今回はノンフィクション作家梯久美子の指摘だ。「先の戦争によって多くの若い男性が命を落とした結果、適齢期の男女の人口バランスが大きく偏る」ことになり、ひとり暮らしとなりながら、親兄弟含めて必死に支えてきた戦中世代の女性達が辿った老後問題だった。世の中の仕組みが一家の長の男性を基準に設計されているがために、いい言葉かどうかは分からぬが寡婦なる人生を贈らざるを得なかった女性達が、老後の身となって直面した日本社会の不都合な真実が、既に1975年に明らかにされていた。「社会的寡婦」という概念らしい。

 報告書「ひとり暮らしの戦後史−戦中時代の婦人たち−」(岩波新書)の観点からは、就職氷河期世代やフクシマ原発含む3.112011被災者も同じ不都合な真実に直面することを看破していたし、正確に暗示していた。COVID-19災禍でも同じ事態が発生しているし、すぐさまに明瞭となろう。社会的寡婦を超える新しい概念がいち早く提案されることを願う。もう今すぐにでも新しい時代を作るためのキーワードとなる概念だ。

 成功した者達は自助という言葉に自惚れているだろうから、自分の成功以上には、あるいはその成功の延長上でしか世を変えることはできない。そのような制度設計では、社会的な要因で弱者の立場に立たされた人々を置き去り続ける。この問題は何としてでも解消していかなければならない。そう努めることが、国民みなに突きつけられている喫緊の課題だ。できないのであれば、国を名乗っていただいては困る。                   (Drソガ)