終わりなき危機
―日本のメディアが伝えない、世界の科学者による福島原発事故研究報告書―
ヘレン・カルディコット監修、川村恵和訳:2015年3月3日発行.258頁、ブックマン社、東京. 1800円.
今週はこの本をどうぞ。原本の発表年月はこの本だけからは分からない。2013年2月、WHOが福島第一原発の放射能漏れに関するリスク評価を発表したあと、2013年3月11日にニューヨーク医学アカデミーで福島の医学的・生態学的影響に関するシンポジウムが開かれた後の集成で、和訳出版は上記の如くその2年後だ。監修者のDr.Helen Caldicottの人物像についてはhttps://en.wikipedia.org/wiki/Helen_Caldicottで知ることができる。Caldicotte Hは「医師としての社会的責任を追及するための組織」(総称PSR)を設立し、「核戦争防止国際医師会議」(IPPNW)傘下、1985年にノーベル平和賞を受賞している。
とまれ、原子力産業にも、また一般大衆にも知らされていなかった情報が含まれている。「時計はもとに戻せない。私たちは汚染された世界に生きるしかない」(小出裕章)。目次だけでも紹介する。
<目次>
はじめに:「福島の災害は終わってもいないし、今後数千年たっても終熄することはない。」―Helen Caldicott
第1章:最も安全なエネルギー政策は原発をなくすこと−菅直人
第2章:汚染された世界に生きるー小出裕章
第3章:驚くに値しないさらなる驚き−Dzvid Lockbaum
第4章:国会事故調査委員会の調査結果−崎山比早子
第5章:放射性セシウムに汚染された日本―Steven Starr
第6章:世界は福島の事故から何を学んだか?−マル村昭雄
第7章:電離放射線の生物系に及ぼす影響について−David Brenner
第8章:福島における初期の健康への影響−Ian Fairlie
第9章:チェルノブイリと福島における生物学的影響−Timothy Mousseau
第10章:WHOとIAEA、ICRPがついた嘘−Alexey V. Yablokov
第11章:ウクライナ、リウネ州における先天性奇形−Wladimir Wertelecki
第12章:いつ何を知ったのか−Arnold Gundersen
第13章:使用済み核燃料プールと放射線廃棄物の管理−Robet Alvarez
第14章:日本とアメリカにおける70年間の放射能による危険性−Kevin Kamps
第15章:福島の事故後の食品監視−Cindy Folkers
第16章:原子力時代におけるジェンダー問題−Mary Olson
第17章:原子力施設から放出される放射線についての疫学調査−Steven Wing
第18章:低レヴェル電離放射線の被曝によるがんの危険性−Herbert Abrams
第19章:原子力発電の台頭と衰退−David Freeman
第20章:原子力時代とこれからの世代−Helen Caldicott